飯田橋光洋クリニック  
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知識専門職のうつ

コンサルタント、IT関連、金融関連のビジネスマン、法律関係者、大学教員等、知的労働者のメンタルヘルス

 知識労働者という概念は、細かい異論はあるでしょうが、P.F.ドラッカーによって世に知られました。彼の「断絶の時代」は1968年に出版されましたが、その中で「知識の時代」の章は知識経済、知識労働、知識労働者の出現と社会の根本的な変化について述べています。外来精神科臨床においてこれを実感したのは、1990年代の後半でした。30歳代のうつ病者の出現です。初めは症例報告レベルの少数でした。それまでのうつ病が、メランコリー親和型を中心とする40歳から50歳代のものであったのに、20歳若い人達でした。
 そして、この現象は数年後には分水嶺を超え、うつ病はこの30歳代のうつ病が中心となりました。彼らの症状は「内因性うつ病」のものであり、脳の疲弊を背景としていました。この点、心理的な問題を核とする、青年期のうつ状態や神経症性抑うつとは異なっています。しかも彼らの大半は企業の中核をなす知識労働者でした。このような臨床場面におけるうつ病の変容はなぜ起こったのか。背景には彼らの本質的な特性があります。
知識労働者とは、旧来は医師、弁護士、科学者、大学教師といった人々でしたが、現在の精神科クリニックには新しいタイプの知識労働者が増えています。具体的には、IT関係のプロジェクトマネージャー、法律事務所のパートナーや所員、公認会計士、金融関係の企業アナリスト、ファンドマネージャー、企業コンサルタント等々です。
 知識労働者は高収入ではありますが、激しい競争があり、労働時間も長くなります。労働時間に関して言えば、知識労働のそれは、必ずしも就業時間中に限るものだけではなく、帰宅後も自宅で仕事が可能であり、その結果、非常に長時間の労働をすることになっています。
近年は、研究者、大学院生、インターン、各種の法律関係の資格試験受験者などにも同じ問題が出現してきています。


知識専門職のうつ病

 知識労働は、肉体労働と異なり仕事の知的達成感が高い。そのため仕事するということ自体に熱中して過集中となりやすい。結果として「仕事ができる人」として自他の評価が高くなり、さらに仕事は拡大、増加して、作業量・作業時間の増加、残業・休日出勤の増加、それにともなう量的疲弊が起こりやすい。彼らはまた、仕事中に異常な集中力を発揮する。始めると文字通り「時間を忘れる」人たちである。朝仕事を始め、気がつくと夕方になっていて昼食を忘れている。この間は仕事と完全に一体化している。夜は夜で残業、そして帰宅後も仕事をする。

彼らは、当院に訪れた人たちの中でも最も精力的な人たちである。性格も明るく、部下に信頼される。職場の中でも自然とリーダーとなっている。過集中の状態で仕事をし、それが成果を出せばまた次の仕事を任される。それを達成するとまた次の仕事を任される。これは一種の「定向進化」の状態である。一度方向性が決まると、無限にその方向に事態が進んでいく。しかし、この達成と過集中を続けていくと何年か(概ね5~7年前後か)で限界がくる。それを越えると、過労と能力低下の悪循環に入っていく。最初は達成感を持って仕事をしていたものが、今度は仕事に追われるようになり、課題を達成するためにだけ仕事をやっているという状態に陥っていく。

そして、脳の疲労の蓄積により、仕事中の能力低下、集中力低下、睡眠障害、食欲低下等が出現し、最終的に意欲低下から出勤不能の状態に陥る。

知識専門職のうつ病・うつ状態に対する当院の治療

①短期的には、休養・仕事時間の短縮等により、疲労の回復をはかる。必要ならば、抗うつ薬、睡眠薬等も使っていく。また、本人を通じて企業のメンタルヘルス担当部門との調整もはかって、仕事調整や復職がスムーズに行くためのシステムズ・アプローチも行う。
②長期的には、本人の仕事生活と家庭生活、そして個人としての生活時間の3者のバランスをつくっていくための、専門的なアドバイスを実施している。
  仕事生活を持続的・安定的なものとするためには様々な知恵が必要であるが、精神科医としての30年間の経験から得た「生きる知恵」を、面接の中で伝えている。

  
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